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2019.02.28 コラム
特殊建築物の定期調査報告を怠るとどうなる?規定と罰則

特殊建築物には定期調査報告制度があり、一定の時期に報告をすることが決められています。ではこの定期調査や報告を怠ったり、偽ったりした場合、どのような罰則処分があるのでしょうか。過去の具体的な事例とともに見ていきましょう。

 

特殊建築物の定期調査報告に関する罰則はどのようなものか

a)法律的な表記

建築基準法第101条に罰則規定が記載されています。

第7章 罰則 第101条(抜粋)
「次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する。

二 第12条第1項又は第3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者」




b)特定行政庁による立入検査

特定行政庁は、建築物の維持管理が適切になされていない場合や、定期報告の督促を行っても応じない場合に、立入検査と指導を行うことがあります。それでも改善が見られない場合に、罰則が適用されることがあります。

立入検査の実施例として、平成24年5月に起きた広島県のプリンスホテル火災事故の後には、全国のホテル・旅館で、平成27年5月に起きた神奈川県の簡易宿泊所の火災事故の後には全国の簡易宿泊所等で、立入検査が行われました。

特定行政庁とは、建築主事の設置された都道府県や市のことを指します。建築主事は人口25万人以上の自治体に設置されるため、人口25万人未満の市区町村では、建築主事に代わり、都道府県が管轄の特定行政庁となります。特定建築物の定期報告は、その建築物の管轄の特定行政庁に報告書を提出します。

定期報告の時期は、特殊建築物は3年に1回、昇降機と建築設備の定期調査の報告は年1回となっています。新築の建築物の場合には、検査済証の交付直後は報告の必要がありません。


c)罰則内容、基準等

定期報告制度は、建築基準法第12条で定められています。
定期報告の提出を怠ったり、虚偽報告をした場合は、100万円以下の罰金処分となる可能性があります。定期報告通知を無視して、報告書の提出期限を過ぎた場合には、督促状が送付されます。

定期調査を実施する有資格者も、罰則処分の対象となります。虚偽の報告をした場合、資格者証の返納が命じられます。返納に応じない場合、30万円以下の罰金処分となります。報告の義務を怠って火災事故が発生し、防災設備の状況や避難の対策がずさんで悪質と判断された場合、執行猶予のつかない実刑判決になった事例もあります。

特殊建築物の事故や災害による甚大な被害を防ぐため、国土交通省と特定行政庁は、定期報告制度の順守を推進し、建築物が安全に維持管理されるよう力を入れています。


d)建物の管理者責任について

建築物の所有者又は管理者が、定期調査や適切な維持管理を怠り他人に損害を生じたときは、その損害を賠償しなければなりません。

建築物や設備の点検は、その設備の所有者の管理を超えて、一級建築士や二級建築士など有資格者による定期的な点検調査が行われます。そして特定行政庁に調査の報告をすることが義務付けられています。

特殊建築物の所有者又は管理者は日頃から安全管理に努め、どのような事情があっても、定めに従って建築物と防災設備の点検を実施し、定期調査報告後に指摘があった場合は、専門技術者と相談の上、速やかに改善を図ることが求められます。



定期調査報告を怠り罰則処分となった具体的な事例

a)事例1

ホテルプリンス火災事故(平成24年5月 広島県福山市)

火災により宿泊客7名が死亡し、従業員1名を含む4名が重傷を負いました。ホテルの社長は業務上過失致死傷害罪に問われ、執行猶予5年、禁固3年の有罪判決となりました。
調査によると、排煙設備の未設置により、煙が充満し視界が悪くなり逃げ遅れたこと、 内装に使われているベニヤ板が救助活動の妨げとなったことなどが被害を大きくしたと見られています。排煙設備の設置は、法律で義務付けられているものでした。また、防火設備の定期報告が38年間行われなかったなど、危機管理のずさんさも問われました。


b)事例2

歌舞伎町ビル火災事故(平成13年9月 東京都新宿区)

雑居ビルの火災により、3階と4階にいた44名が死亡し、脱出時の負傷者も出ました。
自動火災報知器は、誤作動が多いことを理由に電源が切られており、4階は火災報知機を含めた天井部分が、内装材で覆い隠されていました。定期調査報告を怠ったため、避難器具の未設置や正常に作動しないなど、状況が改善されなかった例です。ビルは火災後に使用禁止命令が下され、その後遺族との和解が成立しましたが、ビルは解体されました。和解金は総額10億円を超えると言われました。ビルの管理者5名は、執行猶予付の有罪判決となりました。



まとめ

定期調査報告の目的は、万が一に備え、人命を救い被害を最小限に抑えることです。 正しく定期調査と報告をしていれば、建築物の防災設備の不備や火災発生時の避難経路の問題など、事前に危険を察知し、状況の改善が望めます。定期調査を怠り、報告をしない又は虚偽の報告をすることによって、事故発生時の被害が大きくなった場合には、取り返しのつかない事態となり、罰則も適用されることになります。

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