特殊建築物の定期検査に必要な資格は?

 

特殊建築物に建物が指定されると、建物の規模によって1年に1度の定期調査報告が必要な建物と3年に1度の定期調査が必要な建物に分類されます。どちらの定期調査も専門の調査機関や企業に調査を依頼すると調査にかかる費用はとても高額です。なので、自信で資格を取得し調査、報告をしたいと考えているひとも少なくありません。この記事では定期報告を自身で行うために必要な資格と、資格の習得方法を解説します。

 

定期調査ってなに?特殊建築物の必要な調査は?

建物の定期調査は建築基準法で調査・報告が義務つけられており、安全性と保全性を保つために既定の年度ごとに調査・報告をする必要があります。
定期報告には特殊建築物調査、建築設備調査、防火設備調査、昇降機等調査の4種類があります。
特殊建築物定期調査は1年位1度の調査報告が必要な建物と3年に1度の調査報告が必要な建物に分かれます。
建築設備調査、防火設備調査、昇降等調査の定期検査は毎年調査し報告する必要があります。
特殊建築物に指定されると特殊建築物調査、建築設備調査、防火設備調査の3種類の調査を行う必要があります。4階建て以上の特殊建築物だとエレベーターの設置が義務受けられるので昇降機等調査も必要になります。
特殊建築物に指定されても、各自治体や行政によっては建築設備調査や防火設備調査が不要になる建物も存在します。

特殊建築物の定期調査が可能になる資格は?

特殊建築物の定期調査が可能になる資格は1級建築士、2級建築士、特殊建築物調査員の3種類です。
特殊建築物調査員は特殊建築物調査のみを行うことが可能で、建築設備や防火設備などほかの項目を調査し報告することはできません。
1級建築士、2級建築士だとすべての項目を調査することが可能になります。
1級・2級建築士だとすべての項目を調査することができますが、防火設備のシステム調査や昇降機等の調査は建築士資格だけでは補うことができない複雑な調査になります。点検ミスや作業ミスによって重大な事故が起こることも珍しくないので防火設備や機械類の調査は各専門機関に委託するのが主流です。
なので、精通した知識がなくても資格を習得することで調査が可能になるのは特殊建築物調査や建築設備調査だといえます。

特殊建築物の調査員になるために必要な知識や受験資格は?

特殊建築物の調査員になるために必要な特定の知識はなく、受験資格を満たし合格することで特殊建築物調査員の資格を取得することができます。
特殊建築物調査資格者は多くの人が出入りする特殊建築物を調査し報告することが可能になります。
必要な予備知識はほとんどありませんが、最終日の終了考査では参照できるテキストが決まっているので事前学習をしておくと、よりスムーズに受講し終了考査を受けることができます。

受験資格は下記のとおりです。
1:指定学科での大学を卒業し、実務経験が2年以上の者
2:指定学科での3年生短期大学を卒業し、実務経験が3年以上の者
3:2年生短期大学又は高等専門学校を卒業し、実務経験が4年以上の者
4:高校を卒業し、実務経験が7年以上の者
5:指定学科を卒業していなくても11年以上の建築業務経験がある者
6:その他(要確認:各資格を所有しており、数年以上の実務経験があるもの)

試験の内容は?試験時期や難易度など

資格の難易度は比較的低く、講習と修了考査を受けることで資格を習得することが可能です。
受講地は東京、名古屋、大阪、福岡の4か所で、東京は10月上旬と12月上旬の年二回、名古屋と福岡は10月下旬、大阪では11月中旬に開催されます。
4日間にわたって行われる特殊建築物等調査資格者の受講料は、テキスト代を含めて税込み50,760円となっています。
講習で受講する科目は下記の8科目で4日間に分けて講習が行われます。すべての科目を受講しないと最終日に行われる終了考査を受験することができません。

・建築基準法の構成、概要
・建築学概要
・特殊建築物等定期調査制度総論
・維持保全
・建築構造
・防火、避難
・事故防止
・業務基準

最終日の修了考査では筆記用具、時計(腕時計又は起き時計、携帯電話などは不可)、特定建築物調査員講習テキスト1及びテキスト2、建築基準法令集のみとなっています。
合格率や問題数は毎年異なりますが、終了考査では約30問程度の問題が出題され、19問以上正解することで合格とされているようで、合格率は約63%です。

まとめ

特定建築物調査員の資格は、4日間の講習と最終日の修了考査を受講することによって取得できます。
テキストを参照しながら修了考査を行うことができるので、きちんと講習を受けていれば合格することが可能な難易度の低い資格となっています。
難易度が低いといっても100%合格できるわけではないので、きちんと講習を聞いて万全の態勢で最終日の修了考査に臨みましょう。

公共性が高く多くの人が利用する特殊建築物の定期調査とは

多数の人が利用する建物で火災が発生した場合、避難階段や避難通路が利用できなければ大惨事に なりかねません。 また、煙が広範囲に広がらないためにも、適切な防火区画の設置が不可欠です。

この定期調査は、火災が発生した際に起こり得る事故の規模を、最小限に留めるための維持管理が適切 になされているかなどを調査をし、防災・保全を目的としたものであり、各地域が指定するビル・ マンションの所有者は、(所有者と管理者が異なる場合は管理者)特殊建築物など調査資格者により 定期的に調査し、その結果を地域において定められた機関に報告することが必要です。
(建築基準法 12 条第 1 項・第 3 項)

 

特殊建築物定期調査が必要な建築物

特殊建築物で定期調査が必要な施設には次のようなものが挙げられます。

劇場、映画館、演芸場 、観覧場(屋外観覧席のものを除く)、公会堂、集会場、旅館、ホテル、百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、 場外車券売場、物品販売業を営む店舗、病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設など、旅館、ホテル(毎年報告のものを除く)、学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、下宿、共同住宅、寄宿舎の用途、百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗(毎年報告のものを除く。)展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、対象物のある複合用途建築物(共同住宅などの複合用途および事務所などのものを除く)

ただし規模などの条件にもよります。特殊建築物の主なものを例に上げると次のようになります。

戸建て住宅や事務所以外である程度の規模の建物は定期調査の対象になる可能性があります。

 

特殊建築物定期調査とは

車に車検があるように、戸建て住宅や事務所以外の多くの建物は、特殊建築物定期調査という、専門家による定期調査が建築基準法12条により義務付けられています。特に公共性の高い建築物においては、利用者が常に安全である状態を確保するための制度でもあります。

これは公共性が高く不特定多数の人々が使うために火災が発生しやすく、万が一の時には人命を失う可能性が高く被害も甚大になりがちです。また周囲の環境にも被害がおよびやすいという問題もあります。そのためにこのような施設には定期調査を義務付けしています。

定期調査の主な調査項目は、「敷地・地盤」「建物外部」「屋上・屋根」「建物内部」「避難施設・非常用進入口」です。

 

定期調査の時期について

定期調査には、「特定建築物の定期調査・報告」、「建築設備の定期調査・報告」、「防火設備の定期調査・報告」および「昇降機などの定期調査・報告」の4種類があります。

a.特殊建築物は、用途と規模によって違ってきます。新築、改築後初回の定期報告は免除になり2回目以降より3年ごとに調査が必要になります。
b.建築設備、防火設備、昇降機については毎年検査報告が必要です。

 

調査内容について

特殊建築物定期調査の項目は、敷地・地盤、建物外部、屋上・屋根、建物内部、避難施設・非常用侵入口などについて調査します。また、一級建築士、二級建築士は定期調査すべてを担当できます。

建築設計事務所や設備会社に調査を外注する場合、現地調査のほかに、報告書作成と行政への提出代行を合わせて依頼できるので経験豊富な業者を選定することがスムーズに調査を進めるうえで大切です。

調査項目 調査方法 判断基準
敷地・地盤 地盤の状況 地盤沈下などによる不陸(水平でなく凸凹があること)、傾斜 などの状況 目視 建物周辺に陥没が見られ、安全性を著 しく損ねていないか
建物外部 土台(木造) 劣化・損傷状況 目視、テストハンマーなどによる打診 木材に著しい腐朽接合金物に著しい錆や腐食がないか
屋上・屋根 屋上周りの状況 パラペット(立上り面)の劣 化・損傷の状況 目視、テストハンマーなどによる打診 モルタル面にひび割れが見られ、著しく白華(白い綿状の吹出物あるいは斑点)が発生していないか
建物内部 天井 天井部材などおよび仕上げ材などの 劣化・損傷状況 目視、双眼鏡などやテストハン マーなどによる打診 天井部材、仕上げ材などに浮きたわみなどの劣化、損傷、剥落などがないか
避難施設・非常用進入口 避難経路 物品などの放置状況 目視 避難の支障となる物品などが放置されていないか

まとめ

特殊建築物を利用する人たちの安全確保のために制定された制度であり、たくさんの人が出入りをする建物は、新築後の初回以降3年ごとに特殊建築物定期調査の実施が義務付けられています。定期調査は専門家に依頼をして細かい項目を点検してもらう必要があります。

通知が届いているにも関わらず調査を行わなかった場合は、100万円以下の罰金を支払わなければならない場合があります。忘れないように定期調査を受けましょう。