特殊建築物の定期調査の対象とは?
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学校、体育館、病院、劇場、集会場など公共性が高く、不特定多数の人が利用する特殊建築物。特殊建築物は定期的に点検する義務が建築基準法第12条により定められています。
当記事では特殊建築物の定期報告制度とはどのような制度なのか?またマンションにおける特殊建築物の定期報告制度を解説していきます。
建築基準法第12条に基づく特殊建築物の定期報告制度の概要
1.定期報告が必要な建築物
用途 | 規模 |
劇場、映画館又は演芸場 | ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(用途に供する床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)
・当該用途に供する部分(客席の部分のみ)の床面積の合計が200㎡以上 ・建築物で、主階が1階にないもの |
観覧場、公会堂、集会場 | ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)
・当該用途に供する部分(客席の部分のみ)の床面積の合計が200㎡以上 |
病院、診療所、児童福祉施設等
(高齢者、障害者等の就寝の用に用途があるもの |
・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が300㎡以上 |
ホテル、旅館 | ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合 計が300㎡以上 |
共同住宅、寄宿舎
(高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途に限る) |
・地階又は3階以上の階を高齢者、障害者 等の就寝の用に供する用途に供する建築 物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合 計が300㎡以上 |
体育館
(学校に附属するものを除く) |
・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上 |
博物館、美術館、図書館
(学校に附属するものを除く) |
・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上 |
ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
(学校に附属するものを除く) |
・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上 |
百貨店、マーケット、物品販売業を営む店舗(床面積が10㎡以内のものを除く) | ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上 ・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上 |
キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店 | ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上 ・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上 |
展示場 | ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)
・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上 ・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上 |
*地域によって詳細が異なります。
2.定期調査が必要なその他の設備類
ⅰ 建築設備
特殊建築物などに設けられている、換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備および排水設備
ⅱ 昇降機など
エレベーター・エスカレーター・小荷物専用昇降機・遊戯施設など
③ 調査資格者
ⅰ 建築物
一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員
ⅱ 建築設備
一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員
ⅲ エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機
一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員
ⅳ 防火設備
一級建築士、二級建築士、防火設備検査員
関連記事:定期調査が必要な特殊建築物とは
マンションにおける特殊建築物の定期報告制度
特殊建築物に該当するマンションはマンション本体や建築設備、昇降機などが適切に維持・管理されているかを定期的に有資格者に調査・検査させたうえで、結果を特定行政庁に報告しなければいけません。
特殊建築物等定期調査は3年に1度、建築設備、昇降機などに関しては1年に1度定期検査の結果を報告する義務があります。
一般的に分譲マンションの場合、定期点検の報告は管理組合が行います。
特殊建築物に該当する共同住宅(マンション)は地域によって詳細が異なりますが、概ね3階以上のものであって、床面積の合計が1,000㎡以上の建築物*になります。
*参考:定期報告対象特定建築物等一覧表(北海道)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/ksd/kijun/teikihoukoku.htm
◆特殊建築物の定期調査に関わる事故
1.「ホテルプリンス」の火災事故
宿泊客7人が死亡し、従業員1人を含む4人が重傷を負った火災事故。「ホテルプリンス」では38年前から一度も特殊建築物の定期調査を行っていませんでした。そのことにより、防火設備が不充分なだけではなく、内装で使われていたベニヤ板が救助活動を妨げてしまったことで多くの死傷者が出てしまいました。
2.「宮の沢ハイツ」の崩落事故
「宮の沢ハイツ」の屋上の庇が約30メートルにわたり崩落するという事故が起きました。「宮の沢ハイツ」ではおよそ20年間も定期調査をしていませんでした。幸い死傷者が出ることはありませんでしたが、定期調査をしっかりと行っていれば、未然に防ぐことができる事故であったということができます。
関連記事:マンションの定期報告って何をすればいいの?必要なものは?
まとめ
当記事では特殊建築物の定期報告制度とはどのような制度なのか?またマンションにおける特殊建築物の定期報告制度を解説してきました。特殊建築物の定期報告をしっかりと行い、安全に公共性の高い建築物を利用していきたいものです。
関西地域における特殊建築物の定期調査報告制度とは?
学校やデパート、劇場などの公共性の高い「特殊建築物」には定期的に調査と報告を行う義務が課されています。また特殊建築物の定期調査報告制度は地域によって詳細が異なっています。
当記事では関西主要都市における特殊建築物の定期調査報告制度がどのように定められているのかを見ていきます。
大阪府における特殊建築物の定期調査報告制度
1.大阪府における特定建築物調査・特定建築設備調査の概要
大阪府では特殊建築物の定期調査報告を大阪市、豊中市、堺市、東大阪市、吹田市、高槻市、守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、茨木市、岸和田市、箕面市、門真市、池田市、和泉市、羽曳野市の17か所の市と一般社団法人大阪建築防災センターで取り扱っています。
また昇降機等の定期報告は一般社団法人近畿ブロック昇降機等検査協議会で取り扱っています。
故意的に調査、報告を既定の期間内に報告しなかった場合、100万円以下の罰金が科されつため、期限内にしっかりと定期報告を行いましょう。
2.大阪府における対象となる特定建築物・特定建築設備と調査・報告内容
大阪府における対象となる特定建築物は学校、ボーリング場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場、博物館、美術館、図書館、集会場、劇場、ホテル、旅館、病院、診療所、児童福祉施設等、百貨店、物販店舗、飲食店、共同住宅、その他サービス店とされています。
他県と異なり、学校やボーリング場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場及び給排水設備は調査・報告の対象外です。
3.大阪府における特定建築物・特定建築設備の報告方法
ⅰ 報告書をダウンロードする
報告書は一般社団法人大阪建築防災センターのHPで入手できます。
ⅱ 調査
有資格者の場合は自分で調査を行います。
ⅲ 指定の報告書様式に調査結果を記入
ⅳ 特定行政庁に提出
また資格がない場合、専門の業者に委託すると、すべての作業をお任せすることができて便利です。
4.注意点
ⅰ 支援サービス料
大阪府では特定建築物・特定建築設備の提出の際に、建物の規模によって3000円から15000円の支援サービス料がかかります。
ⅱ 報告期間
4月1日から12月25日まで。支援サービス料の早期提出割引の適用は4月1日から8月末まで。
兵庫県における特殊建築物の定期調査報告制度
1.兵庫県における特定建築物調査・特定建築設備調査の概要
兵庫県では特殊建築物の定期調査報告を神戸市、尼崎市、姫路市、西宮市、伊丹市、明石市、加古川市、宝塚市、川西市、三田市、芦屋市、高砂市の12か所の市と公益財団法人兵庫県住宅建築総合センターで取り扱っています。
2.兵庫県における対象となる特定建築物・特定建築設備と調査・報告内容
兵庫県における対象となる特定建築物は劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場、病院、診療所、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場、百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗、事務所その他これに類するものとされています。
また建築設備、防火設備、昇降機等のほかにもブロック塀等の定期報告が必要です。
3.兵庫県における特定建築物・特定建築設備の報告方法
ⅰ 報告書をダウンロードする
報告書は兵庫県住宅建築総合センターのHPで入手できます。
ⅱ 調査
有資格者の場合は自分で調査を行います。
ⅲ 指定の報告書様式に調査結果を記入
ⅳ 特定行政庁に提出
また資格がない場合、専門の業者に委託すると、すべての作業をお任せすることができて便利です。
4.注意点
ⅰ 報告期間
7月から10月まで。
ⅱ 提出先
神戸市は市のみに提出先が限定されています。
関連記事:神戸市の特殊建築物の定期調査報告制度 対象建築物や報告方法詳細
神戸市における特殊建築物の定期調査報告制度
1.神戸市における特定建築物調査・特定建築設備調査の概要
神戸市は特殊建築物の定期調査報告の提出先が神戸市に限定されています。また定期調査報告を行った建築物の所有者や管理者に対して、ステッカーが配布されます。
定期報告の義務を怠ったり、虚偽報告をした場合、処分の対象になるため注意が必要です。
2.神戸市における対象となる特定建築物・特定建築設備と調査・報告内容
劇場、映画館、演芸場、屋内観覧場、公会堂 、集会場、学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、 スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場、百貨店、マーケット、 物品販売業を営む店舗、 展示場、病院、診療所、 児童福祉施設等、共同住宅及び寄宿舎、ホテル、旅館、共同住宅、公衆浴場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、待合、料理店、飲食店、事務所その他これに類するものとされています。
3.神戸市における特定建築物・特定建築設備の報告方法
ⅰ 特殊建築物等定期調査報告書の入手
神戸市のHPからダウンロードします。
ⅱ 神戸市住宅都市局安全対策課ビル防災対策係に報告書を持参する
神戸市では調査を行った有資格者が神戸市住宅都市局安全対策課ビル防災対策係に報告書を持参しなければいけません(代理不可)。
4.注意点
ⅰ 報告期間
8月1日から11月30日まで。
関連記事:兵庫県の特殊建築物の定期調査報告制度 対象建築物や報告方法詳細
まとめ
当記事では関西主要都市における特殊建築物の定期調査報告制度がどのように定められているのかをご紹介してきました。見てきたように特殊建築物の定期調査報告制度は地域で異なるため、調査・報告する準備段階でしっかりと自分の地域の特殊建築物の定期調査報告制度がどのようになっているのかを調べることが大事だといえます。
特殊建築物定期報告の概要と期間を詳しく解説
特殊建築物の定期報告には特殊建築物定期検査報告と防火設備定期検査報告、建築設備定期検査報告書、昇降機等定期検査報告があります。
特殊建築物定期報告は3年に1回の検査報告が必要で、防火設備定期検査報告、建築設備定期検査報告書、昇降機等定期検査報告は毎年の調査報告が必要となっています。
特殊建築物定期検査報告の詳細は各自治体によって変わります。
特殊建築物定期検査報告の概要
特殊建築物(特定建築物)調査は、建築基準法第12条によって定められている調査で、特定建築物は建築基準法第2条2項で定められている不特定多数の人が扱う公共性の高い建物が該当します。
なので、特殊建築物調査は戸建て住宅や事務所以外のほとんどの建物が該当し、調査結果によって経営や資産価値は大きく変わってきます。
調査内容は、「敷地・地盤」「建物外部」「屋上・屋根」「建物内部」「避難施設・非常用進入口」に分かれており、敷地・地盤のひび割れや損傷、排水が正しく行われているか、建物の外壁にひび割れや沈下がないか、屋上・屋根のひび割れや損傷、排水が正しく行われているか、建物内部の壁や床・天井に損傷はないか、避難経路は正しく行われているかなどを詳しく調査します。
調査方法は主に、目視とハンマーなどでたたいて確認し、建物の外部に関しては平成20年の建築基準法改正以降、打診・赤外線カメラ等による詳細な調査が必要となっています。
また、従来の基準では簡単な調査で報告を終わらせてる建物が多かったために自然災害や事故の際に重大な火災や崩落が相次いだために、特殊建築物定期検査報告は、平成24年から25年にかけて大幅に見なされ、定期報告の強化がされました。
特殊建築物定期検査報告の期間と報告年について
特殊建築物定期検査報告の期間は3年に1回で、用途ごとに報告年度が定められています。
建物の用途や各自治体(特定行政庁)によっては毎年調査する必要もあるので確認が必要です。
特殊建築物定期検査報告には建築設備と防火設備の調査項目があり、建築設備の調査は学校とボーリング場・スケート場・水泳場・スポーツ練習場・体育館を除くすべての特殊建築物で毎年1回、防火設備の調査は全ての特定建築物で毎年1回の定期検査報告が必要となります。
報告年については、各都道府県によって異なるので、各都道府県のホームページより確認してください。
初回調査の免除と調査対象
戸建て住宅以外のほとんどの建物が該当する特殊建築物ですが、用途、規模によっては定期報告が免除されたり、定期調査の報告頻度が変わります。
新築の特殊建築物、又は改築後の特殊建築物については、検査済みの書類を受け取った日付が属する年度の特定建築物定期検査は免除され、翌年以降の報告時期から特定建築物定期検査報告が必要になります。
学校やボーリング場などのスポーツ練習場、博物館・美術館・図書館・集会場・劇場・観覧場・ホテル・病院・福祉施設・百貨店。飲食店・共同住宅は3階以上に対象用途があると、特殊建築物定期検査報告をする必要があり、3階以下の場合は特定建築物定期検査報告は必要ありません。
また、3階以下であっても、所要面積がオーバーしていると特定建築物定期検査報告を実施する必要があります。
学校やボーリング場などのスポーツ練習場・博物館・美術館・図書館は3階以下で床面積が2000㎡以内であれば特定建築物定期検査報告は必要なくなり、事務所は5階以下で床面積3000㎡以内であれば特定建築物定期検査報告は必要ありません。
共同住宅の場合は、3階以上に対象用途があり床面積1000㎡以上の場合、又は5階以上に対象用途があり床面積500㎡以上に当てはまらない構造だと特定建築物定期検査報告は必要ありません。
サービス付高齢者向け宿舎、認知症対応型グループホーム、障害者支援グループホーム、サービス付高齢者向け住宅の場合は、3階以上に用途がある場合、地下に対象用途がある場合、2階部分の対象用途の床面積が300㎡以上の場合のいずれかに当てはまると、特殊建築物定期検査報告が必要になります。
共同のサービス付き高齢者向け住宅や共同住宅の場合、非常用エレベーターが設置されていると建築設備の定期検査が必要で、共同住宅は非常用エレベーターが設置されていると防火設備定期検査が必要になります。
定期報告書類の保管期間
定期報告には特殊建築物定期検査報告、防火設備定期検査報告、建築設備定期検査報告書、昇降機等定期検査報告の4種類があり、報告書類の控えを保存する義務はありません。
ですが、建築物を適正な状態で維持し続けるには報告書類を保存し続けることをおススメします。
まとめ
今回は、特殊建築物定期検査の詳細を紹介しました。
特殊建築物定期検査の報告時期は3年に1回と定められていますが、各自治体によって報告年度は変わってきます。
また、報告が必要な条件や回数も違ってくるので、各自治体での確認が必要です。
平成24年に建築基準法が改正されて以来、調査の方法や調査項目などが強化されましたが、災害や事故から建物を守るための大切な検査報告なので、きめられた期間にきちんと調査しましょう。
特殊建築物の防火設備定期報告の詳細と報告方法
特殊建築物定期調査とは別に、新たに新設された防火設備定期検査は、建物を火事から守るための大切な定期調査です。
今回は、防火設備定期調査に関する詳細を紹介します。
特殊建築物の防火設備定期報告制度の内容
防火設備検査は、2016年の建築基準法改正によって新たに新設された調査項目です。
特殊建築物(特定建築物)として指定された建築物の防火設備に重点を置いた検査で、病院や診療所などの主に公共性の高い建物が該当します。
建築物の定期報告には防火設備定期報告の他に、特殊建築物定期調査報告など様々な調査報告があります。
特殊建築物定期調査報告の中にも防火設備に関する調査報告をしなければいけない項目がありますが、各定期報告によって調査の仕方、調査報告内容が異なっているので、特殊建築物に設置されている防火設備によって防火設備点検定期報告が必要か必要でないかは変わってきます。
定期調査報告制度の改正前は特殊建築物等定期調査報告の中に含まれている「防火設備の設置状況の確認」の項目にそって報告するだけでしたが、基準が緩く、火災時に防火設備がきちんと作動しなかった事故が多く起きたために、詳しく防火設備を点検するために改正後には特殊建築物等定期調査と別に防火設備定期調査が加えられました。
防火設備の定期報告が必要になる対象と消防用設備等点検との違い
防火設備点検が必要になる条件は、調査対象の建物が特殊建築物であることと煙と熱を感知して動作する防火設備があることの2点です。
防火設備点検の対象となる建築物は特殊建築物と呼ばれる劇場や百貨店、ホテル、病院、販売店、体育館、ボーリング場、映画館、共同住宅、事務所などの個人や家族を含め、その他大勢の不特定多数が利用する公共性の高い建物になります。
また、各自治体によっても追加で指定されている建築物があるので、注意が必要です。
防火設備定期調査の対象となる設備は、建築基準法第12条第3項の規定により「火災時に煙や熱を感知して閉鎖又は作動する防火設備」とされています。
この、「火災時に煙や熱を感知して閉鎖又は作動する防火設備」には、主に屋内の面積や防犯区画ごとに延焼防止目的で設置された火災時の避難経路となる臨時閉鎖式防火設備のことを差します。
避難経路となる防火設備には、防火設備用感知器、自動防火扉、手動防火扉、自動防火シャッター、手動防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャー、温度ヒューズ式の防火設備等が該当します。
常に閉まっている通常閉鎖式の防火設備や防火ダンパーは防火設備定期調査報告の対象にはなりません。
また、野外や外部に設置されている扉やシャッターは「防犯設備」に該当するので、防火設備定期調査報告の対象にはなりません。
防火設備点検と消防用設備等点検との違いは、火事を防ぐのか知らせるのかの違いです。
消防用設備に該当するのは、自動火炎報知器、複合型の消火設備、発信機、非常灯、地区音響装置が該当します。
どれも、火事が起きたことを知らせるための装置で、防火設備点検に該当する防火のための装置とは役割が異なります。
防火設備の定期報告の調査方法と必要な書類と資格
防火設備定期調査の主な方法は、防火シャッター、防火扉、耐火クロススクリーンなどの駆動装置の稼働確認と、煙熱感知器との連動閉鎖確認、その他危害防止機能の稼働確認です。
特殊建築物の防火設備定期調査は、原則として1年に1回の頻度で調査する必要があり、専門の資格を所持した調査員が調査を行い地方自治体(特定行政庁)に報告します。
防火設備定期調査をすることができる防火設備調査員になるには、1級建築士又は2級建築士、防火設備検査員の国家資格を習得する必要があります。
防火設備定期調査を報告するために必要な書類は、建築物の所在地がある各地方自治体(特定行政庁)のホームページからダウンロードすることができます。
どの地方自治体のホームページでも、検査項目と検査方法の詳細や必要な提出物、作成方法などが詳しく搭載されています。
特殊建築物の防火設備定期調査に必要な書類は、地方自治体によって多少異なりますが、防火設備定期調査報告書2部と防火設備定期調査報告概要、提出リスト、事務手数料を事前振り込みいた際の振り込み書の写しが必要となります。
防火設備の定期報告を提出する方法
提出先は各都道府県によって、地方自治体か業務を委託された一般財団法人かに分かれるので、事前に確認しておきましょう。
できあがった検査報告書は直接自治体に持参するのではなく、郵送で指定の住所に送ることで報告は完了します。
地方自治体によって異なりますが、直接窓口に持参しても受け取ってもらえない地方自治体が多いので注意が必要です。
提出前に、事務手数料を指定の口座に振り込んでく必要があるので、事務手数料を事前に振り込み、振り込みが確認できる写しを提出書と一緒に同封して郵送するようにしましょう。
まとめ
今回は特殊建築物の防火設備定期調査について紹介しました。
防火設備は火事の際に建物を守る大切な設備なので、きちんと毎年調査し、報告する義務があります。
できあがった検査報告書は直接自治体に持参するのではなく、郵送で指定の住所に送ることで完了します。
特殊建築物調査に比べると調査項目は少ないので、比較的簡単に自身で資格を習得して報告することが可能です。
特殊建築物の定期調査 概要と自治体別の報告書書式について
多くの人々が利用する特殊建築物は、適切な維持管理を目的として、定期調査報告が義務付けられています。定期調査の概要をふまえた上で、自治体別に異なる定期報告の書式を説明します。
特殊建築物の定期調査概要と報告方法
a)概要
特殊建築物とは、不特定多数の人々が利用する比較的面積も大きな建築物です。具体的には学校や劇場、百貨店、ホテル・旅館、マンションや飲食店、ダンスホール・ナイトクラブなどです。これらの建築物は、構造や設備が特殊なため、火災や事故が発生した場合に、多くの人々や周辺環境に大きな被害を及ぼす恐れがあります。建築基準法により、特殊建築物は、完成後も建物や設備の適切な維持管理を行い、定期的な点検と報告をすることが義務付けられています。
定期調査では、建築物が損傷や劣化をしていないか、違反の改変がないか等を点検します。建築基準法に基づく定期報告の調査項目は、下記の通りです。
1 建築物(敷地及び地盤・建築物の内部と外部・屋上と屋根・避難施設等)
2 建築設備(換気設備・ 排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備)
3 昇降機等(エレベーター・エスカレーター・小荷物専用昇降機・遊戯施設等)
4 防火設備(防火扉・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャー等)
定期調査は、一級建築士・二級建築士、特定建築物調査員などの有資格者が行います。 定期報告をするのは、建築物の所有者または管理者に義務があります。
b)定期調査の報告方法
定期報告の提出は、建築基準法により、特定行政庁に提出することになっています。特定行政庁とは、人口25万人以上で建築主事を設置する自治体のことを言います。人口25万人未満の市区町村では、所属する都道府県が管轄の特定行政庁となります。実際に報告書を提出する窓口は、都道府県や市のホームページで確認できます。
特殊建築物の定期調査 自治体別の書式詳細
a) 兵庫県
兵庫県住宅建築総合センターのページからダウンロードすることができます。兵庫県ホームページからもリンクしています。概要は以下の通りです。
1 特殊建築物定期検査報告書
・報告書
・調査結果表
・調査結果図
・関係写真
2 建築設備定期検査報告書
・報告書
・検査結果表
・測定表
・調査結果図
・関係写真
・国土交通大臣が定める項目の検査計画書
3 防火設備定期検査報告書
・報告書
・検査結果表
・調査結果図
・関係写真
4 添付図面
・付近見取図
・配置図
・各階平面図
いずれもA4(折り・縮小版可)
指摘のあった箇所や、防火区画がある場合は、図面上に赤書き等で明示する
b) 神戸市
神戸市ホームページ「定期報告制度(建築物・建築設備・防火設備)」ページからダウンロードできます。概要は以下の通りです。
1 報告書表紙
2 特殊建築物等の定期調査報告書の報告内容について
3 定期調査報告書 第1面から第4面
4 階別用途別床面積不要の場合は省略可能
5 建築物の履歴に関する事項
6 調査結果表
7 図面等(付近見取り図:A3折り図またはA4)
イ.付近見取図:A3折図又はA4図
ロ.配置図:原則A3折図(容易に判別できる場合はA4縮小可)
ハ.各階平面図:上記同じ
・防火区画(赤線)、防火設備の種別、防煙区画(青線)を明示する
・避難経路(赤点線)を明示する
・指摘のあった箇所や撮影した写真の位置を明記する
二.関係写真:A4
8 定期調査報告概要書
c) 大阪市
大阪建築防災センターのサイトより、書式をダウンロードできます。概要は以下の通りです。
1 報告書(第一面〜第三面)
2 建築物定期調査結果書
3 調査結果表
4 調査結果図(配置図・各階平面図)
5 関係写真
6 概要書
d) 京都府
京都府ホームページ「特定建築物等の定期報告制度について」ページからダウンロードできます。概要は以下の通りです。
1 定期調査報告書
2 定期調査概要書
3 調査結果表
4 調査結果図
5 関係写真
6 添付図面
・付近見取図(方位、道路及び目標となる地物)
・配置図(縮尺、方位、敷地の境界線、敷地内の建築物の位置・用途、敷地に接する道路の位置・幅員)
・建築物の各階平面図(縮尺、方位、間取り、各室の用途、壁の位置、開口部・防火戸の位置、延焼のおそれのある部分の外壁・軒裏の構造、防火区画・隔壁の位置、非常口、非常用進入口・避難施設の位置)
まとめ
定期報告の書式は、特定行政庁や都道府県・市によって異なります。建築物の所在地を管轄する自治体の情報を確認して、指定の書式を使用しましょう。また、報告書には図面等の添付書類が必要です。書類をもれなく揃えて、指示通りの記入をして提出する必要があります。特殊建築物は多くの人々が利用する建物です。長く安全に維持管理ができるよう、定期報告を適切に行うことが重要です。
特殊建築物の定期調査報告を怠るとどうなる?規定と罰則
特殊建築物には定期調査報告制度があり、一定の時期に報告をすることが決められています。ではこの定期調査や報告を怠ったり、偽ったりした場合、どのような罰則処分があるのでしょうか。過去の具体的な事例とともに見ていきましょう。
特殊建築物の定期調査報告に関する罰則はどのようなものか
a)法律的な表記
建築基準法第101条に罰則規定が記載されています。
第7章 罰則 第101条(抜粋)
「次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する。二 第12条第1項又は第3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者」
b)特定行政庁による立入検査
特定行政庁は、建築物の維持管理が適切になされていない場合や、定期報告の督促を行っても応じない場合に、立入検査と指導を行うことがあります。それでも改善が見られない場合に、罰則が適用されることがあります。
立入検査の実施例として、平成24年5月に起きた広島県のプリンスホテル火災事故の後には、全国のホテル・旅館で、平成27年5月に起きた神奈川県の簡易宿泊所の火災事故の後には全国の簡易宿泊所等で、立入検査が行われました。
特定行政庁とは、建築主事の設置された都道府県や市のことを指します。建築主事は人口25万人以上の自治体に設置されるため、人口25万人未満の市区町村では、建築主事に代わり、都道府県が管轄の特定行政庁となります。特定建築物の定期報告は、その建築物の管轄の特定行政庁に報告書を提出します。
定期報告の時期は、特殊建築物は3年に1回、昇降機と建築設備の定期調査の報告は年1回となっています。新築の建築物の場合には、検査済証の交付直後は報告の必要がありません。
c)罰則内容、基準等
定期報告制度は、建築基準法第12条で定められています。
定期報告の提出を怠ったり、虚偽報告をした場合は、100万円以下の罰金処分となる可能性があります。定期報告通知を無視して、報告書の提出期限を過ぎた場合には、督促状が送付されます。
定期調査を実施する有資格者も、罰則処分の対象となります。虚偽の報告をした場合、資格者証の返納が命じられます。返納に応じない場合、30万円以下の罰金処分となります。報告の義務を怠って火災事故が発生し、防災設備の状況や避難の対策がずさんで悪質と判断された場合、執行猶予のつかない実刑判決になった事例もあります。
特殊建築物の事故や災害による甚大な被害を防ぐため、国土交通省と特定行政庁は、定期報告制度の順守を推進し、建築物が安全に維持管理されるよう力を入れています。
d)建物の管理者責任について
建築物の所有者又は管理者が、定期調査や適切な維持管理を怠り他人に損害を生じたときは、その損害を賠償しなければなりません。
建築物や設備の点検は、その設備の所有者の管理を超えて、一級建築士や二級建築士など有資格者による定期的な点検調査が行われます。そして特定行政庁に調査の報告をすることが義務付けられています。
特殊建築物の所有者又は管理者は日頃から安全管理に努め、どのような事情があっても、定めに従って建築物と防災設備の点検を実施し、定期調査報告後に指摘があった場合は、専門技術者と相談の上、速やかに改善を図ることが求められます。
定期調査報告を怠り罰則処分となった具体的な事例
a)事例1
ホテルプリンス火災事故(平成24年5月 広島県福山市)
火災により宿泊客7名が死亡し、従業員1名を含む4名が重傷を負いました。ホテルの社長は業務上過失致死傷害罪に問われ、執行猶予5年、禁固3年の有罪判決となりました。
調査によると、排煙設備の未設置により、煙が充満し視界が悪くなり逃げ遅れたこと、 内装に使われているベニヤ板が救助活動の妨げとなったことなどが被害を大きくしたと見られています。排煙設備の設置は、法律で義務付けられているものでした。また、防火設備の定期報告が38年間行われなかったなど、危機管理のずさんさも問われました。
b)事例2
歌舞伎町ビル火災事故(平成13年9月 東京都新宿区)
雑居ビルの火災により、3階と4階にいた44名が死亡し、脱出時の負傷者も出ました。
自動火災報知器は、誤作動が多いことを理由に電源が切られており、4階は火災報知機を含めた天井部分が、内装材で覆い隠されていました。定期調査報告を怠ったため、避難器具の未設置や正常に作動しないなど、状況が改善されなかった例です。ビルは火災後に使用禁止命令が下され、その後遺族との和解が成立しましたが、ビルは解体されました。和解金は総額10億円を超えると言われました。ビルの管理者5名は、執行猶予付の有罪判決となりました。
まとめ
定期調査報告の目的は、万が一に備え、人命を救い被害を最小限に抑えることです。 正しく定期調査と報告をしていれば、建築物の防災設備の不備や火災発生時の避難経路の問題など、事前に危険を察知し、状況の改善が望めます。定期調査を怠り、報告をしない又は虚偽の報告をすることによって、事故発生時の被害が大きくなった場合には、取り返しのつかない事態となり、罰則も適用されることになります。
特殊建築物の防火設備の定期調査とは?点検内容と対象設備
特殊建築物の防火設備は、定期的な調査と報告が義務付けられています。法律で定められた点検内容には、どのような項目があるのか、また、点検の対象となる防火設備について具体的にご説明します。
防火設備の定期調査には建築基準法と消防法の点検がある
a)概要
平成28年度建築基準法の改正に伴い、防火設備の定期調査についても制度が改正されました。この背景には、平成25年10月に福岡県の診療所で発生した火災事故があります。火災発生時に自動的に閉まるはずの防火扉が作動せず、多数の犠牲者が出る痛ましい事故となりました。このような事故の再発防止のために、防火設備は定期調査が強化されました。
点検調査を行う資格があるのは、一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員、建築設備検査員、防災設備検査員のいずれかの有資格者となります。報告書は、各都道府県の決まった様式で提出することになります。
定期報告の対象建築物は、不特定多数の者が利用する建築物とその防火設備、高齢者や自力避難が困難な物が就寝する施設とその防火設備、エレベーターやエスカレーターなどです。
具体的には下記のような建築物で、床面積や階層が規定の数値を超えるものが対象となります。
・劇場、映画館、演芸場、屋内観覧場、公会堂又は集会場
・病院、診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設
・体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
・百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、 バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗
防火設備の定期調査は、毎年1回の報告が定められています。これは、火災発生時に防火設備が正常に作動しないと、人命に関わる大きな影響を及ぼすためです。平成28年から30年度までの3年間は経過措置として、1回目の報告実施と決められています。
b)建築基準法の点検内容
防火設備の定期調査は、建築基準法の定めと消防法の定めの2種類があります。
建築基準法では、煙感知器や熱感知器、ヒューズ装置、防火扉と防火シャッター、耐火クロススクリーンの点検が定められています。
建築基準法における防火設備の点検は、延焼防止のための防火区画を形成することで、火災発生時に安全に避難できる経路を確保することを目的として、設備が正常に作動するかを確認します。
c)消防法の点検内容
これに対して、消防法では、煙感知器と熱感知器、火災報知機と室内の火災設備や消火器の点検が定められています。
建築基準法と消防法の両方に共通するのは、連動制御器の点検です。
消防法による消防設備の点検は、火災発生を知らせる警報や消火設備が正常に作動するかどうかの点検です。
消防法による点検が設備の正常作動を主としているのに対して、建築基準法における防火設備の定期調査は、人命の安全が最終的な目的となっています。
特殊建築物の定期調査対象となる4つの防火設備
a)防火扉
主に屋内に、延焼防止の目的で設置され、火災発生時には避難経路となります。防火設備の定期調査の対象となるのは、随時閉鎖式の防火扉です。随時閉鎖式の防火扉は、通常解放されており、火災発生時に感知器と連動して閉鎖されるものです。 火災発生時に防火扉が正常に閉まるか点検が行われます。また、扉の閉まり方が強く早いと、人が挟まれて怪我をする危険があるため、防火扉も締まり方について測定が行われます。
一方、常時閉鎖式の防火扉は、普段は閉まっており、通行するときのみ開閉します。こちらは防火設備の定期検査対象外となり、特定建築物の調査対象となります。
b)防火シャッター
防火シャッターは、主に屋内で建物の開口部が大きく、その開口部を閉鎖する必要がある場合、延焼を防止する目的で設置されます。百貨店やショッピングモール、病院施設など、主に大型建築物や複合施設によく見られます。防火シャッターは必要な時だけ閉めるため、常時閉鎖式にはなりません。火災感知器や非常ボタンでシャッターが閉まります。 定期調査の内容として、シャッターの開閉や感知器との連動、シャッターボックスの破損などがないかを点検します。防火シャッターは、シャッターが閉まった際に人が挟まれて怪我をしないよう、危害防止装置のついたものがあります。この装置が正しく動作するかも点検対象です。
c)耐火クロススクリーン
防火シャッターと同様に、屋内で延焼防止のために設置される、天井から閉め降ろすタイプの防火設備です。エレベーターの前や倉庫などで見られ、耐火クロススクリーンの素材はガラス製のクロスです。防火シャッターより耐火クロススクリーンが軽量でペン素材も柔らかいため、人が挟まれる危険性が少ないのが特徴です。
耐火クロススクリーンの点検項目は、感知器との連動と正常に閉まるかどうか、巻取式で開閉するクロスクリーンの場合は、危害防止装置が正常に作動するかも確認します。
d)ドレンチャー
ドレンチャーは、火災発生時に天井部から水が噴射され、水の膜を作って炎や煙が拡がるのを防ぎます。駅や空港など、防火シャッターや耐火クロスクリーンでは対応できない大きな空間に用いられます。
ドレンチャーは、点検であっても実際に水の噴射を作動させることができないため、専門の技術者によって点検が行われます。
以上4種類の防火設備について、定期調査報告では、平面図に対象防火設備の設置箇所を記入し、所有者・管理者の情報や対象建築物の報告書とともに提出します。
まとめ
防火設備は、いざという時に多数の人命を守る重要な役割を担います。多くの人々が利用する大型施設に使用されることも多いため、定期調査により不具合や消耗を発見し改善することは必須です。火災事故を未然に防ぎ、万が一の場合も被害を最小限に抑えることにつながります。
兵庫県の特殊建築物の定期調査報告制度 対象建築物や報告方法詳細
特殊建築物は定期調査と報告が定められていますが、その管轄や定期報告の提出先は自治体によって異なります。兵庫県の場合、定期報告制度はどのような内容なのか、報告対象の建築物や報告方法を具体的に見ていきましょう。
兵庫県の特殊建築物の定期調査 概要と報告対象について
a)概要
建築基準法第8条第1項により、建築物の所有者管理者又は占有者は、その建築物の敷地や構造、建築設備を、常に適法な状態に維持するよう努めなければならないと規定されています。また、不特定多数の人々が利用する大規模な建築物に関しては、万が一、事故や災害が発生した時に多大な被害をもたらす恐れがあります。そのため、建築物の所有者や管理者が、有資格者によって定期調査を行い、特定行政庁に報告することが義務付けられました。この定期報告制度は、建築基準法第12条第1項及び第3項に定められています。
兵庫県での定期報告の流れは、まず所有者又は管理者に、定期報告書が送付されます。報告書は、兵庫県建築防災センターが受付し、各々の特定行政庁が審査と指導を行います。審査結果は、所有者又は管理者に送付されます。 審査結果に訂正事項がある場合は、特定建築物の所有者又は管理者は、専門技術者とともに改善に努める義務があります。指示のある場合は、改善計画書や改善報告書を提出する場合があります。
b)兵庫県内の特定行政庁
定期報告の対象建築物等は、国の政令による指定の他に特定行政庁、特定行政庁以外の市町区域は、兵庫県が地域の実態を考慮して指定しています。
兵庫県の特定行政庁は、以下の12市です。
神戸市、尼崎市、姫路市、西宮市、伊丹市、明石市、加古川市、宝塚市、川西市、三田市、芦屋市、高砂市
c)報告対象となる建築物・建築設備
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場(200㎡以上)
・病院、診療所、児童福祉施設等(300㎡以上)
・ホテル、旅館(300㎡以上)
・下宿、共同住宅、寄宿舎(100㎡以上)
・共同住宅、寄宿舎のうち、サービス付高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム障害者グループホームに限る建築物(300㎡以上)
・学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場(2000㎡以上)
・百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(500㎡以上)
・事務所その他これに類するもの(地下3階以上)
兵庫県が特定行政庁として管轄する市町区域では、定期報告の業務を行う有資格者等が、対象となる特殊建築物のリストを閲覧することができます。これは定期報告の実施率を向上させる目的で提供されています。
防火設備の定期点検報告について
平成30年度より、一級建築士、二級建築士又は防火設備検査員の有資格者による、毎年の検査報告が義務となりました。
対象となる防火設備は、随時閉鎖式(普段開いていて、火災発生時に煙や熱の感知により作動して閉まる)防火設備です。
防火設備は、防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーです。
常時閉鎖式の防火設備(普段閉まっており、火災発生時に開ける防火設備)、外壁開口部設置の防火設備や防火ダンパーは、定期点検報告の対象外となります。
ブロック塀等の定期報告について
組積造の塀又は補強コンクリートブロック造の塀等も、耐震の面から定期報告の対象項目となっています。特殊建築物に付随するこれらの塀に劣化や損傷がないか点検し、安全管理に努める必要があります。
d)報告する内容
兵庫県の定期報告制度には、下記の4種類の報告内容があります。
・特定建築物の定期調査、報告
・建築設備の定期検査、報告
・防火設備の定期検査、報告
・昇降機等の定期検査、報告
兵庫県の定期調査報告はどのような流れで行うのか
a)兵庫県の定期報告に関する提出先・管轄
特定行政庁が県の場合は県知事宛、市の場合は市長宛に報告します。神戸市以外の特定行政庁は、定期報告業務の委託先として、公益財団法人兵庫県住宅建築総合センターに報告書を提出することもできます。神戸市は市のみが提出先です。
定期報告に必要な書類の要綱と書式は、インターネット上の兵庫県住宅建築総合センターのページからダウンロードすることができます。
b)報告時期
定期調査報告は3年ごとに行い、建築物の種類によって報告時期が異なります。
・劇場や観覧場、病院診療所は、3年ごと、平成32年7月から10月
・ホテルや旅館、下宿、共同住宅、サービス付き高齢者向け住宅は、3年ごと、平成30年7月から10月
・学校や博物館、百貨店、事務所その他は、3年ごと、平成31年7月から10月です。
まとめ
特定建築物の定期調査は3年ごとに行う必要があります。報告書の提出先は、市町村によって異なります。報告時期も建物の種類によって違うため、確認が必要です。防火設備についても定期調査と報告が定められていますので、こちらもあわせて確認しましょう。
神戸市の特殊建築物の定期調査報告制度 対象建築物や報告方法詳細
特殊建築物は、定期的に調査と報告を行うことが定められています。神戸市の場合、どのような建築物や建築設備が点検・報告対象となるのでしょうか。また、定期報告の提出先や報告書の具体的な仕様について、詳しく見ていきましょう。
神戸市の特殊建築物の定期調査 概要と報告対象について
a)概要
建築基準法第12条第1項で定められた特殊建築物等の定期調査に基づき、特殊建築物の所有者や管理者は、調査の有資格者に定期的に対象建築物を調査してもらい、特定行政庁に報告する必要があります。この特殊建築物等定期報告制度は、建築物の安全管理を目的として、3年に1回、調査と報告を行う制度です。
定期報告の義務を怠ったり、虚偽報告をした場合には、罰則処分の対象となります。
特殊建築物の定期調査報告書の提出状況は、神戸市のホームページで公表されています。これは、建築物の安全な維持管理の大切さを、広く市民に理解してもらうために行われています。
b)報告対象となる建築物・建築設備
・劇場、映画館、演芸場、屋内観覧場、公会堂 、集会場(建物全体で200㎡以上)
・学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、 スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場(建物全体で2,000㎡以上)
・百貨店、マーケット、 物品販売業を営む店舗、 展示場(建物全体で500㎡以上)
・病院、診療所、 児童福祉施設等、共同住宅及び寄宿舎(サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グル ープホームに限る)、ホテル、旅館(建物全体で300㎡以上)
・事務所その他これに類するもの(建物全体で 1,000㎡以上)
・共同住宅(建物全体で500㎡以上)
・公衆浴場(建物全体で 3,000㎡以上)
・キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、待合、料理店、飲食店(建物全体で500㎡以上)
対象建築物を取り壊したり、現存していない場合や、新築又は全面改築による検査済証の交付直後については、定期調査の報告対象外となります。
建築基準法による特殊建築物の定期報告の他に、指定建築設備、防火設備、昇降機等は別途報告が必要です。これらは対象範囲や報告時期が特殊建築物の場合と異なります。
c)報告済ステッカー
定期調査報告を行った建築物の所有者や管理者には、定期報告済ステッカーが配布されます。定期調査報告制度の報告率を向上し、制度を広く知ってもらうためにこのステッカーが生まれました。定期調査済の建築物の出入口など、広く皆の目に触れる所にステッカーを貼ることで、定期調査報告制度を推進することを目的としています。
定期調査報告は、神戸市では3年に1回必要となるため、ステッカーの色が青と緑とピンクで分かれており、これらの色によって次回の定期報告の年度が分かるようになっています。
神戸市の特殊建築物の定期調査 概要と報告対象について
a)概要
建築基準法第12条第1項で定められた特殊建築物等の定期調査に基づき、特殊建築物の所有者や管理者は、調査の有資格者に定期的に対象建築物を調査してもらい、特定行政庁に報告する必要があります。この特殊建築物等定期報告制度は、建築物の安全管理を目的として、3年に1回、調査と報告を行う制度です。
定期報告の義務を怠ったり、虚偽報告をした場合には、罰則処分の対象となります。
特殊建築物の定期調査報告書の提出状況は、神戸市のホームページで公表されています。これは、建築物の安全な維持管理の大切さを、広く市民に理解してもらうために行われています。
b)報告対象となる建築物・建築設備
・劇場、映画館、演芸場、屋内観覧場、公会堂 、集会場(建物全体で200㎡以上)
・学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、 スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場(建物全体で2,000㎡以上)
・百貨店、マーケット、 物品販売業を営む店舗、 展示場(建物全体で500㎡以上)
・病院、診療所、 児童福祉施設等、共同住宅及び寄宿舎(サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グル ープホームに限る)、ホテル、旅館(建物全体で300㎡以上)
・事務所その他これに類するもの(建物全体で 1,000㎡以上)
・共同住宅(建物全体で500㎡以上)
・公衆浴場(建物全体で 3,000㎡以上)
・キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、待合、料理店、飲食店(建物全体で500㎡以上)
対象建築物を取り壊したり、現存していない場合や、新築又は全面改築による検査済証の交付直後については、定期調査の報告対象外となります。
建築基準法による特殊建築物の定期報告の他に、指定建築設備、防火設備、昇降機等は別途報告が必要です。これらは対象範囲や報告時期が特殊建築物の場合と異なります。
c)報告済ステッカー
定期調査報告を行った建築物の所有者や管理者には、定期報告済ステッカーが配布されます。定期調査報告制度の報告率を向上し、制度を広く知ってもらうためにこのステッカーが生まれました。定期調査済の建築物の出入口など、広く皆の目に触れる所にステッカーを貼ることで、定期調査報告制度を推進することを目的としています。
定期調査報告は、神戸市では3年に1回必要となるため、ステッカーの色が青と緑とピンクで分かれており、これらの色によって次回の定期報告の年度が分かるようになっています。
神戸市における定期調査報告方法の詳細
a)神戸市の定期報告に関する提出先・管轄
神戸市の定期調査の報告書提出先は、神戸市住宅都市局安全対策課ビル防災対策係です。報告書は、調査をした有資格者が直接提出先に持参することが決められています。郵送や代理提出は認められていません。
b)報告時期
報告時期は平成30年の場合8月1日から11月30日までの4ヶ月間となっており、調査後3ヶ月以内に報告する必要があります。
c)仕様書・様式等
特殊建築物等定期調査報告書は指定の使用形式があります。平成28年度より建築基準法改正に伴って使用する様式となっており、神戸市のホームページからもダウンロードできます。
具体的な様式は以下の通りです。
1 報告書表紙
2 特殊建築物等の定期調査報告書の報告内容について
3 定期調査報告書 第1面から第4面
4 階別用途別床面積不要の場合は省略可能
5 建築物の履歴に関する事項
6 調査結果表
7 図面等(付近見取り図:A3折り図またはA4)
イ.付近見取図:A3折図又はA4図
ロ.配置図:原則A3折図(容易に判別できる場合はA4縮小可)
ハ.各階平面図:上記同じ
・防火区画(赤線)、防火設備の種別、防煙区画(青線)を明示する
・避難経路(赤点線)を明示する
・指摘のあった箇所や撮影した写真の位置を明記する
二.関係写真:A4
2 定期調査報告概要書 1部提出
是正項目があった場合は、改善箇所や是正方法、改善完了までの安全確保について記した改善計画書を提出する必要があります。その後、改善完了時には、改善完了報告書も提出します。
まとめ
同じ兵庫県内でも、市町村によって定期調査の提出先や提出書類の仕様が異なります。神戸市では報告書を神戸市に直接提出することが定められ、報告書の形式も定められた雛形があります。これらを事前に確認した上で、特定建築物の所有者又は管理者は、適切な対応が求められます。
大阪府の特定建築物・特定建築設備の内容や報告方法
各都道府県や地方政府によって特定建築物や特定建築設備の対象や調査内容、報告方式、報告先は変わってきます。この記事では大阪府での特定建築物と特定建築設備の調査内容や報告方式などを詳しく解説します。
大阪府の特定建築物調査・特定建築設備調査の概要や報告率
定期調査の概要は、維持管理・保全の不備や不具合によって時大きな事故や災害が発生したり、被害が拡大することを未然に防ぐ事です。
大阪府では特定建築物、特定建築設備、防火設備の報告が義務付けられており、昇降機等の定期報告は一般社団法人近畿ブロック昇降機等検査協議会が指示、管理しています。
特定建築物調査と特定建築設備調査は、安全な維持・保全管理と複数の人が安心して建物、施設を利用することができるように、建築基準法によって特定期間ごとに調査と報告が義務つけられています。
調査と報告が義務付けられているにもかかわらず、大阪府の特定建築物調査の報告率は約79%、建築設備調査は約77%となっています。
大きなビルや広大な範囲の地下街、複雑な設備だと毎年報告が必要な特定建築物や特定建築設備の調査が追い付かない場合も多いので、大阪府の報告率は毎年75%から80%ほどのにとどまっています。
故意的に調査、報告を既定の期間内に報告しなかった場合は、建築基準法第101条によって100万円以下の罰金が科せられます。
大阪府で対象となる特定建築物・特定建築設備と調査・報告する内容
大阪府で特定建築物に分類される建物は学校、ボーリング場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場、博物館、美術館、図書館、集会場、劇場、ホテル、旅館、病院、診療所、児童福祉施設等、百貨店、物販店舗、飲食店、共同住宅、その他サービス店です。
大阪府が特定する建物は他県と比べるととても幅広く、指定の規模の大きさはさまざまですが、博物館や学校など比較的大きな3階以上2000㎡から3000㎡以上の規模の建物から、個室ビデオ店や劇場など床面積が200㎡からの小さな店舗も特定建築物に指定されます。
特定建築設備に分類される設備は機械換気設備、機械排煙設備、非常用の照明設備で給排水設備は対象外になっています。
学校やボーリング場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場は特定建築設備検査の対象外になります。
大阪府で特定建築物・特定建築設備の報告をするには?
大阪府の特定建築物調査はどの建物もすべて3年に1度の定期調査が必要になります。
特定建築物の報告に必要な書類は受付票、報告書様式、和泉市内の建物は調査結果表も作成する必要があります。
特定建築設備の報告に必要な書類は報告書様式のみです。
報告書は一般社団法人大阪建築防災センターのホームページからダウンロードすることができ、パソコンから記入できるEXCEL用と手書き用の2種類が用意されています。
どの書類にも報告書作成上の注意点・記入方法・つづり方・調査項目・調査方法・判定基準が詳しく書かれたマニュアルも送付されています。
自信が資格取得者である場合は調査を行い指定の報告書様式に調査結果を記入し、特定行政庁に提出することで報告は完了します。
資格がない場合は専門の業者に委託することで調査から報告書の作成まで行ってもらうことができます。
大阪府の定期報告先である特定行政庁は、大阪市、豊中市、堺市、東大阪市、吹田市、高槻市、守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、茨木市、岸和田市、箕面市、門真市、池田市、和泉市、羽曳野市の17か所で、それ以外の市町村は一般社団法人大阪建築防災センターが提出先になります。
報告に関する注意点
調査結果の報告に使用する報告書様式は毎年新しい様式に更新されているので、一度ダウンロードした用紙を毎年流用せずに毎年新しい報告書をダウンロードするようにしましょう。
最新の報告様式でなければ受理してもらうことができません。
大阪府では特定建築物・特定建築設備の提出の際に、建物の規模によって3000円から15000円の支援サービス料が必要になります。
大阪府の特定建築物の調査報告は例年4月1日から12月25日までとなっています。
支援サービス料の早期提出割引を受けるには4月1日から8月末までに報告書を提出する必要があります。
報告期限内に報告がない場合は、翌年の1月下旬から2月中旬ごろに督促状が送付されます。
原則、報告様式は直接窓口に提出する必要があります。
まとめ
大阪府はほとんどの商業施設やサービス施設の建物が特定建築物の定期検査に該当します。
特定建築設備の検査では給排水設備の項目は対象外になります。
大阪府での定期検査報告の際には支援サービス料が提出と同時に必要になります。
一般社団法人大阪建築防災センターの定期検査報告のホームページに、必要事項や調査の仕方など詳しく記載されているので、初めての調査報告でも安心して行うことができます。