特殊建築物の定期調査の対象とは?

学校、体育館、病院、劇場、集会場など公共性が高く、不特定多数の人が利用する特殊建築物。特殊建築物は定期的に点検する義務が建築基準法第12条により定められています。
当記事では特殊建築物の定期報告制度とはどのような制度なのか?またマンションにおける特殊建築物の定期報告制度を解説していきます。


建築基準法第12条に基づく特殊建築物の定期報告制度の概要

1.定期報告が必要な建築物

用途 規模
劇場、映画館又は演芸場 ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(用途に供する床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)

・当該用途に供する部分(客席の部分のみ)の床面積の合計が200㎡以上

・建築物で、主階が1階にないもの

観覧場、公会堂、集会場 ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)

・当該用途に供する部分(客席の部分のみ)の床面積の合計が200㎡以上

病院、診療所、児童福祉施設等

(高齢者、障害者等の就寝の用に用途があるもの

・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が300㎡以上

ホテル、旅館 ・地階又は3階以上の階を当該用途に供す る建築物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合 計が300㎡以上

共同住宅、寄宿舎

(高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途に限る)

・地階又は3階以上の階を高齢者、障害者 等の就寝の用に供する用途に供する建築 物(床面積の合計がそれぞれ100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合 計が300㎡以上

体育館

(学校に附属するものを除く)

・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上

博物館、美術館、図書館

(学校に附属するものを除く)

・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上

ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場

(学校に附属するものを除く)

・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する部分の床面積の合計が 2.000㎡以上

百貨店、マーケット、物品販売業を営む店舗(床面積が10㎡以内のものを除く) ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上

・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上

キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店 ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上

・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上

展示場 ・3階以上の階を当該用途に供する建築物(床面積の合計が100㎡以上)

・当該用途に供する2階部分の床面積の合計が500㎡以上

・当該用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以上

*地域によって詳細が異なります。

2.定期調査が必要なその他の設備類
ⅰ 建築設備
特殊建築物などに設けられている、換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備および排水設備

ⅱ 昇降機など
エレベーター・エスカレーター・小荷物専用昇降機・遊戯施設など

③ 調査資格者
ⅰ 建築物
一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員

ⅱ 建築設備
一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員

ⅲ エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機
一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員

ⅳ 防火設備
一級建築士、二級建築士、防火設備検査員

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マンションにおける特殊建築物の定期報告制度

特殊建築物に該当するマンションはマンション本体や建築設備、昇降機などが適切に維持・管理されているかを定期的に有資格者に調査・検査させたうえで、結果を特定行政庁に報告しなければいけません。
特殊建築物等定期調査は3年に1度、建築設備、昇降機などに関しては1年に1度定期検査の結果を報告する義務があります。
一般的に分譲マンションの場合、定期点検の報告は管理組合が行います。

特殊建築物に該当する共同住宅(マンション)は地域によって詳細が異なりますが、概ね3階以上のものであって、床面積の合計が1,000㎡以上の建築物*になります。

*参考:定期報告対象特定建築物等一覧表(北海道)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/ksd/kijun/teikihoukoku.htm

◆特殊建築物の定期調査に関わる事故

1.「ホテルプリンス」の火災事故
宿泊客7人が死亡し、従業員1人を含む4人が重傷を負った火災事故。「ホテルプリンス」では38年前から一度も特殊建築物の定期調査を行っていませんでした。そのことにより、防火設備が不充分なだけではなく、内装で使われていたベニヤ板が救助活動を妨げてしまったことで多くの死傷者が出てしまいました。

2.「宮の沢ハイツ」の崩落事故
「宮の沢ハイツ」の屋上の庇が約30メートルにわたり崩落するという事故が起きました。「宮の沢ハイツ」ではおよそ20年間も定期調査をしていませんでした。幸い死傷者が出ることはありませんでしたが、定期調査をしっかりと行っていれば、未然に防ぐことができる事故であったということができます。

関連記事:マンションの定期報告って何をすればいいの?必要なものは?



まとめ

当記事では特殊建築物の定期報告制度とはどのような制度なのか?またマンションにおける特殊建築物の定期報告制度を解説してきました。特殊建築物の定期報告をしっかりと行い、安全に公共性の高い建築物を利用していきたいものです。

定期調査が必要な特殊建築物とは

特殊建築物とは基本的に公共性が高く不特定多数の人が出入りする建築物ですが特殊建築物の定期調査とは建築基準法第12条に制定されている制度です。学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場など公共的で不特定多数の利用がなされる建築物が対象です。対象となる建築物については、3年ごとや毎年の定期点検が義務付けられています。

 

調査の対象となる特殊建築物は

特殊建築物で定期調査が必要な施設には次のようなものが挙げられます。

劇場、映画館、演芸場 、観覧場(屋外観覧席のものを除く)、
公会堂、集会場、旅館、ホテル、百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、 場外車券売場、物品販売業を営む店舗、病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設など、旅館、ホテル(毎年報告のものを除く)、学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、下宿、共同住宅、寄宿舎の用途、百貨店、
マーケット、物品販売業を営む店舗(毎年報告のものを除く。)展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、対象物のある複合用途建築物
(共同住宅などの複合用途オリンピック担当および事務所などのものを除く)

 

ただし規模などの条件にもよります。特殊建築物の主なものを例に上げます。

 

特殊建築物の種類 特殊建築物の規模と階数
学校 F≧3階 またはA>2000㎡
体育館 F≧3階 またはA>2000㎡
百貨店 F≧3階 またはA>500㎡
ホテル F≧3階 またはA>300㎡
旅館 F≧3階 またはA>300㎡
マンション F≧5階 またはA>1000㎡
共同住宅 F≧5階 またはA>1000㎡
飲食店 地階もしくはF≧3階 またはA>500㎡
ダンスホール・ナイトクラブ 地階もしくはF≧3階またはA>500㎡
劇場 地階もしくはF≧3階またはA>500㎡

 

戸建て住宅や事務所の他である程度の規模の建物は定期調査の対象になる可能性があります。

地域によって詳細に違いがあるので確認が必要です。

 

 

定期調査が必要なその他の設備類と調査・検査資格者

特殊建築物の設備類も定期調査が必要です。定期調査が必要な設備として次のようなものがある。

建築設備

用途 規模 または 階 報告時期
換気設備(自然換気設備を除く。) 上記の特殊建築物などに設けるもの 毎 年 報 告

前年の報告日の翌日

から起算して1年を

経過する日まで

排煙設備(排煙機または送風機を有するもの)
非常用の照明装置
給水設備および排水設備 (給水タンクなどを設けるもの)

 

昇降機など

用途 報告時期
エレベーター(労働安全衛生法の性能検査を受けているものを除く。) 毎 年 報 告

前年の報告日の翌日

から起算して1年を

経過する日まで

エスカレーター
小荷物専用昇降機(テーブルタイプを除く。)
遊戯施設など(乗用エレベーター、エスカレーターで観光用のものを含む。)

 

調査・検査資格者

定期調査における調査資格者および検査資格者は下記のとおりです。

資格 特定建築物 建築設備 昇降機・遊戯施設 防火設備
1・2級建築士
特定建築物調査員 × × ×
建築設備検査員 × × ×
昇降機など検査員 × × ×
防火設備検査員 × × ×

定期調査をせずに起きた事故

平成24年5月13日に広島県福山市のホテル「ホテルプリンス」で発生した火災事故がありました。宿泊客7人が死亡し、従業員1人を含む4人が重傷を負うという火災事故です。
このホテルはなんと定期調査を38年前から一度も行っていなかったのです。また元経営者である火元責任者が死亡したことも消防署に届け出ていませんでした。
しかも防火設備が不充分なだけでなく管理もずさんであったことがわかりました。防火対策として建築基準法で義務付けられていた定期調査の未実施、定期調査を行わないがため設備の不備や状況も把握せず放置していたため非常時には機能せず避難を妨げ、このような悲惨な事故につながってしまいました。

また内装で使われていたベニヤ板が救助活動を妨げるという諸条件が死亡者を増やしてしまった要因となりました。
このホテルの運営会社社長は業務上過失致死傷害罪に問われました。平成27年1月には広島地裁で禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が言い渡されています。

この火災後の調査で、現行法で設置が義務付けられている排煙設備を設置していないために煙が室内に充満し視界が遮られたため従業員や宿泊客は逃げることができなかったことがわかってます。
その後「ホテルプリンス」は売却され更地になりました。定期調査を含む法的処置を取らなかったためなにもかも無くしたのです。

 

まとめ

戸建て住宅や事務所以外の多くの不動産が対象となっている特殊建築物定期調査。

多くの人の安心安全のためにも大切な定期調査ではあるが、点検や報告書作成は専門的な知識も手間もかかる。経験豊富な専門家に依頼をして確実かつスムーズに手続きを進めましょう。