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特殊建築物の防火設備の定期調査とは?点検内容と対象設備
特殊建築物の防火設備は、定期的な調査と報告が義務付けられています。法律で定められた点検内容には、どのような項目があるのか、また、点検の対象となる防火設備について具体的にご説明します。
防火設備の定期調査には建築基準法と消防法の点検がある
a)概要
平成28年度建築基準法の改正に伴い、防火設備の定期調査についても制度が改正されました。この背景には、平成25年10月に福岡県の診療所で発生した火災事故があります。火災発生時に自動的に閉まるはずの防火扉が作動せず、多数の犠牲者が出る痛ましい事故となりました。このような事故の再発防止のために、防火設備は定期調査が強化されました。
点検調査を行う資格があるのは、一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員、建築設備検査員、防災設備検査員のいずれかの有資格者となります。報告書は、各都道府県の決まった様式で提出することになります。
定期報告の対象建築物は、不特定多数の者が利用する建築物とその防火設備、高齢者や自力避難が困難な物が就寝する施設とその防火設備、エレベーターやエスカレーターなどです。
具体的には下記のような建築物で、床面積や階層が規定の数値を超えるものが対象となります。
・劇場、映画館、演芸場、屋内観覧場、公会堂又は集会場
・病院、診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設
・体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
・百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、 バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗
防火設備の定期調査は、毎年1回の報告が定められています。これは、火災発生時に防火設備が正常に作動しないと、人命に関わる大きな影響を及ぼすためです。平成28年から30年度までの3年間は経過措置として、1回目の報告実施と決められています。
b)建築基準法の点検内容
防火設備の定期調査は、建築基準法の定めと消防法の定めの2種類があります。
建築基準法では、煙感知器や熱感知器、ヒューズ装置、防火扉と防火シャッター、耐火クロススクリーンの点検が定められています。
建築基準法における防火設備の点検は、延焼防止のための防火区画を形成することで、火災発生時に安全に避難できる経路を確保することを目的として、設備が正常に作動するかを確認します。
c)消防法の点検内容
これに対して、消防法では、煙感知器と熱感知器、火災報知機と室内の火災設備や消火器の点検が定められています。
建築基準法と消防法の両方に共通するのは、連動制御器の点検です。
消防法による消防設備の点検は、火災発生を知らせる警報や消火設備が正常に作動するかどうかの点検です。
消防法による点検が設備の正常作動を主としているのに対して、建築基準法における防火設備の定期調査は、人命の安全が最終的な目的となっています。
特殊建築物の定期調査対象となる4つの防火設備
a)防火扉
主に屋内に、延焼防止の目的で設置され、火災発生時には避難経路となります。防火設備の定期調査の対象となるのは、随時閉鎖式の防火扉です。随時閉鎖式の防火扉は、通常解放されており、火災発生時に感知器と連動して閉鎖されるものです。 火災発生時に防火扉が正常に閉まるか点検が行われます。また、扉の閉まり方が強く早いと、人が挟まれて怪我をする危険があるため、防火扉も締まり方について測定が行われます。
一方、常時閉鎖式の防火扉は、普段は閉まっており、通行するときのみ開閉します。こちらは防火設備の定期検査対象外となり、特定建築物の調査対象となります。
b)防火シャッター
防火シャッターは、主に屋内で建物の開口部が大きく、その開口部を閉鎖する必要がある場合、延焼を防止する目的で設置されます。百貨店やショッピングモール、病院施設など、主に大型建築物や複合施設によく見られます。防火シャッターは必要な時だけ閉めるため、常時閉鎖式にはなりません。火災感知器や非常ボタンでシャッターが閉まります。 定期調査の内容として、シャッターの開閉や感知器との連動、シャッターボックスの破損などがないかを点検します。防火シャッターは、シャッターが閉まった際に人が挟まれて怪我をしないよう、危害防止装置のついたものがあります。この装置が正しく動作するかも点検対象です。
c)耐火クロススクリーン
防火シャッターと同様に、屋内で延焼防止のために設置される、天井から閉め降ろすタイプの防火設備です。エレベーターの前や倉庫などで見られ、耐火クロススクリーンの素材はガラス製のクロスです。防火シャッターより耐火クロススクリーンが軽量でペン素材も柔らかいため、人が挟まれる危険性が少ないのが特徴です。
耐火クロススクリーンの点検項目は、感知器との連動と正常に閉まるかどうか、巻取式で開閉するクロスクリーンの場合は、危害防止装置が正常に作動するかも確認します。
d)ドレンチャー
ドレンチャーは、火災発生時に天井部から水が噴射され、水の膜を作って炎や煙が拡がるのを防ぎます。駅や空港など、防火シャッターや耐火クロスクリーンでは対応できない大きな空間に用いられます。
ドレンチャーは、点検であっても実際に水の噴射を作動させることができないため、専門の技術者によって点検が行われます。
以上4種類の防火設備について、定期調査報告では、平面図に対象防火設備の設置箇所を記入し、所有者・管理者の情報や対象建築物の報告書とともに提出します。
まとめ
防火設備は、いざという時に多数の人命を守る重要な役割を担います。多くの人々が利用する大型施設に使用されることも多いため、定期調査により不具合や消耗を発見し改善することは必須です。火災事故を未然に防ぎ、万が一の場合も被害を最小限に抑えることにつながります。