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特定建築物定期調査の外壁全面打診 調査対象や調査方法について

特定建築物定期調査の外壁全面打診 調査対象や調査方法について

特殊建築物の定期調査報告において、外壁面の調査基準が厳しくなりました。全面打診調査の対象となる建築物の条件や、調査方法、費用について詳しく見ていきましょう。

 

特定建築物定期調査の外壁全面打診詳細 調査対象と範囲・方法

外壁全面打診調査は、エレベーター・ジェットコースターの事故や外壁の落下事故が多く発生したことを受けて、平成20年に国土交通省により施行されました。従来の定期報告制度の検査項目や方法を、より厳しく変更した内容です。法改正前は、定期報告時の目視と部分的な打診調査を行い、異常判明時には精密検査を要する旨の注意喚起を行っていました。法改正後は、外壁面が指定の条件に該当する場合、全面打診調査が必要となりました。

 

a)調査対象となる外装仕上げ材

調査対象となる外装仕上げ材は、主に以下の3種類です。
・タイル貼り(接着剤張り・ 適用下地・施工記録あり) ※全面改修を含む )
・石貼り(乾式工法を除く)
・モルタル貼り

 

b)全面打診調査が必要な範囲

建築基準法第12条に基づき、全面打診調査と定期報告の対象となるのは、建築物の竣工後または外壁の改修後、10年を超えた物件です。調査は、主に外壁の損傷確認や剥落防止、歩行者等への危害防止と補修・落下防止方法の検討のために実施されます。

10年以内の竣工・改修物件や、外装材にタイル・石貼り・モルタル貼りを使用していない物件は、目視による調査を実施します。10年超の物件でも、3年以内に外壁改修または全面打診調査を行うことが確実である場合や、歩行者の安全対策が取られている場合は、目視及び手の届く範囲内での部分打診調査を実施します。ただし、目視や部分打診調査で以上が判明した場合は、全面打診調査が必要となります。

全面打診調査が必要となる範囲は「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」です。これは、当該壁面の前面かつ当該壁面高さ概ね2分の1の水平面内に、公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内道路、広場を有する物のことです。

壁面直下に、鉄筋コンクリートや鉄骨で造られた、落下物から歩行者を守る設備がある場合や、屋根や庇、植込等の設置により、落下物の影響角が完全に遮られる部分がある場合は、調査対象外となります。

 

c)全面打診調査の調査方法

テストハンマーなど専用の道具で全面を打診する調査、又は赤外線調査を行います。

・打診調査

対象建築物が低層なのか高層なのかによって、全面打診調査の方法は異なります。1階から3階建の低層建築物の場合は、脚立やアップスライダーを利用して調査できます。4階建以上の中高層建築物は、ゴンドラや高所作業車の利用、屋上からロープを下げる、仮設足場を設置するといった方法が必要になり、調査費用の負担が大きくなります。

高所作業車は高層建築物の打診調査にも利用できますが、作業車を設置する敷地のスペースや、公道にかかる場合は道路使用許可や交通整理人員等が必要となってきます。

打診調査は、 外壁の落下で歩行者に危害を加える恐れがある部分の外壁全面に対して行います。タイルやモルタルに浮きがある場合、打音の変化が生じるため、浮きの場所と程度が判定できます。調査担当者の経験値により、多様な打音の聴き分けや測定時間の短縮につながります。聴力による判定のため、測定時間をより短くすることが調査精度を高めます。

・赤外線調査

赤外線調査は、赤外線の映像装置でタイルの表面温度を測定することで、正常な部分(健全部)と、浮きのある異常部分を判定します。 外壁タイルの健全部は、太陽光の熱で温まると、その熱が躯体に伝わります。外壁タイルに浮きがある場合は、躯体と仕上げ材に空気の隙間ができ、熱が伝わりにくくなるため、外装表面温度が高くなります。

赤外線調査のメリットは、打診調査より比較的安価で安全なことと、現地調査から報告書の提出までが素早く完了できることです。調査時に打診音がないため、建物の居住者の負担が少ないことも安心です。

赤外線調査は測定環境の影響を受けます。天候や外壁面の方角、凹凸、測定機材の使用方法によっ、て精度が下がる場合があります。測定機材と外壁の間に障害物があると、正しい測定の妨げとなります。高層部でも赤外線測定は困難です。

 

d)費用

外壁調査の費用は、調査する外壁面の面積と、調査方法によって異なります。

打診調査の場合、ゴンドラ利用やロープ降下等、状況により見積もりを取って確認する必要があります。高所作業車の使用や、仮設足場を組む必要がある場合は、費用が高額になります。その他にも、打診費用と報告書(損傷図等)の作成費用がかかります。

赤外線調査は、高所作業車や足場設置の費用に比べて、コストが抑えられる傾向にあります。目視と部分写真を含む赤外線の撮影と、画像の解析費用、報告書の作成費用(写真台帳・損傷図等)がかかります。

まとめ

歩行者の安全を守るために、外装材の全面打診調査と適切な補修が必要です。建築物の条件により、調査方法や費用は異なります。まずは対象の外装材がどうか、全面調査にかかる費用の見積もりを確認し、法令で義務付けられた定期調査と報告・改善を実施しましょう。

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